オーナーハンドラー体験記


私がドッグショーを初めて見たのは、東京ビッグサイトで開催されていた2000年のアジアインターナショナルドッグショーでした。当時利プリは生後4ヶ月で、その時には会場には連れていかず、1日目は私の母と就学前の姪と共に、2日目はパパと2人で出かけました。このときに初めて少しだけパピヨンの審査を見たのですが、女の子のクラスだったように記憶しています。どちらの日であったかは忘れてしまいましたが、この時のアジアインターの印象は、W・コーギー人気も手伝ってかたくさんのコーギーがいて、ドッグショーって人気犬種を反映するものなんだなと感じたものでした。W・コーギー・Pは、私が純血種や血統、スタンダードに興味を持つようになり、勉強を始めるきっかけを作ったワン子でもあります。

   

2000年アジアインター  人気犬種のW・コーギー・P


翌年の2001年のアジアインにはパピヨンが出る2日目に、パパと親友と3人で見に行きました。ちょうど男の子のチャンピオンクラスの審査をしていて、何頭かピックアップされてアップダウンをしているときだったと記憶しています。その中で私の目に飛び込んできたのは、2頭のパピヨンでした。当時はまだ名前も知らなかったのですが、後からその2頭がヒムカ君とエミール君であったことを知りました。この2頭のパピヨンは素人の私たちの目にも光り輝いて映りました。美しいシルキーなコートをなびかせ、胸を張って堂々とエレガントに歩く姿に、(パピヨンってこんなに綺麗に歩くんだ。)と感嘆したことは今でも忘れることが出来ません。

下の写真は会場にショーを見にきていたパピヨンちゃんを撮らせて頂いたものです。 (写真は'00年か'01年のどちらに撮らせて頂いたものかは定かではありません。)

   


3回目のショー見学は2002年のアジアインでした。この時にはパパと買物目的の妹と3人で出かけ、前もってパピヨンの審査時間を調べて既に生まれていた3パピの内、車酔いをしないあちゃ丸と美々杏を連れて行きました。この年もクリエイトランドさんのヒムカ君がBOBで、それはそれは光り輝いて見えました。長年「犬は外で飼うもの組」で、室内犬を「本能を無くした犬」と思い、愛玩犬には興味のなかったパパさえも、ヒムカ君とエミール君を指し、「あのワンちゃんたちは別格だね。」と言わしめたくらい、遠目にもこの2頭のパピヨンは特に目立って見えました。

'01・2002年B0B GV 名誉会長賞に輝いたアジアのパピヨン・ヒムカ君
(この写真はクリエイトランドさんから頂きました。)


家の子達もいつかこんな舞台に立てる日が来るのだろうか? 何時の間にか、アジアインターに家の子を出すということが私の夢になっていました。

クリエイトランドさんにあちゃ丸とムーを預っていただき、ムーは思っていたよりも早くCHを完成していただいたので、2002年中に家に帰って参りました。そこで、クリエイトランドの中川社長さんに、アジアインターに自分のワン子を出すことが夢であることを打ち明けましたところ、いろいろとご配慮いただき、ムーはオーナーハンドラーでCHクラスから、ウィンズも出場するなら、ハンドリングの御指導を下さる。あちゃ丸はそれまでにCHを完成していても、小夜子先生が引いて下さるということで、思わぬ速さで私の夢が叶うこととなりました。

ミカニヤンケンネルさんご夫妻やハンドラーのohishiさんにもご指導賜り、いろいろと助けていただきました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

子パピをショーに出すようになってからオーナーハンドラーでショーに出るまでの道は思っていたよりも大変でしたが、多くの方々に助けられ、励まされ、大変ながらも充実した日々を送れたような気がいたします。寒さ、暑さに弱く、アウトドア的な趣味もなく、体力に乏しい(でも学生のころは運動神経には自信があり、体育会系でした)私にとっては、自分のワン子がショーに出るということは、日頃の出不精を解消する良いきっかけにもなりました。

オーナーハンドラーに向けてはまずハンドリングマニュアル本を購入し、その後、自分の体力作りとワン子の体作り、マナーの練習、自分のワン子の長所と欠点をスタンダードと照らし合わせて、客観的に見つめることから始めました。

JKCから出ているハンドリングマニュアル


ムーは歯並びもよく、耳は大きく45度に開き、背中は真直ぐで首もテールも長く、歩様も綺麗なので、比較的減点されるところの少ないタイプと言えました。クリエイトランドさんでの修業の御蔭で、ややシャイなところがあった性格面も見違えるくらいに強くなり、ネックだった車酔いもしなくなり、苦手だった大きな男性も大丈夫になっていました。もともと聞き分けが良く、比較的何でもそつなくこなすところがありましたが、そこに「自信」をつけて帰って参りましたのでほとんど手がかかりませんでした。

ウィンズも歯並びがよく、丈夫で立派な歯をしています。長所はやはり大きく45度に開いた耳と、きりりとした端正な顔立ち、ダイナミックで美しい歩様ですが、意外とデリケートな面があり機械音や金属音、そして大きな男性が苦手でしたので、身長180センチ近い甥っ子と遊ばせたり、散歩に連れ出してもらったりして慣らしました。またウィンズはトイレの時、後ろの飾り毛を汚してしまうことが多いので、真っ白なコートが黄ばむことのないよう、汚れるたびに部分洗いをしなくてはなりませんでした。

私は仕事を持っておりますので、休みの天気の良い日には人通りのある外に出て、1頭20分くらいづつ、仕事の日には昼休みに屋上特設リンクで1頭10分づつくらい、夜にはクリエイトランドさんから送って頂いた、2001年アジアイン、2002年アジアイン、あちゃ丸とムーの出場した全てのショーのビデオを見て研究し、ハンドリングとマナーの練習を約1ヵ月間(でも毎日ではありません)した結果、途中から訓練を始めた利プリや美々杏も何とか触診台で立っていられるようになりました。

ハンドリングの中で私が特に一番難しいと感じたのは「フリースタンディング」です。これは手を加えてセットすることが出来ませんので、その犬本来の姿が出やすいように感じます。

小夜子先生とあちゃ丸 これぞプロのスタンディングポーズ


ムーはリラックスしている時には綺麗に自然に立てるのですが、気持ちが高まると後ろの左足が1歩前に出て、「構え」のような形になってしまうことがあります。

自然に立っているときのムー 長い首とテールがチャームポイント


ウィンズは後ろ足の角度が浅めなため、中央から腰に掛けて少しラインがせり上がって見えますので、後ろ足が十分に引けないとスティが決まりにくいのですが、ショー会場でワン子にぐっと後ろ足に力を入れさせて立たせるのは、精神的な面も大きく影響するようなので、素人初心者の私にはなかなか難しい面がありました。

上手くスタンディングポーズのとれた時のウィンズ


利プリと美々杏はショーといった点では何とも判断しにくい面があります。利プリは女の子としてはかなりの毛量があり、見た目は1番ゴージャスで華があるのですが(友人にはゴージャス利プリと呼ばれています・・笑い)、3歳を越え、性格も頑固になりつつあり、出産したため体型が変わって体重も増え(人間と同じですね・・・)、胸幅が開いてしまったのでドスドスと蟹股で歩くのです。あの音も立てずに歩いていた可憐な利プリはどこぞといった感じでしたので、ダイエットから始めなくてはなりませんでした。

  

花のような利プリ                                       でも貫禄がありすぎ・・・?


美々杏は小さくて痩せていて体力もないため、ショーにはどうかとも思いますが、パピヨンとしてのクオリティーは他のCHを完成した同胎犬2頭よりも高いような気がいたします。特に顔立ちがかわいらしく、毛質も家の子の中では一番美しいものを持っております。知り合いの方々からも、「もう1回り大きかったら、かなりいけるのでは・・・」と言っていただけていることからも、小さいながらも良いものを備えていると思っておりますが、やはりアンダーサイズに見えてしまうようです。実際に計ると体高は21センチあって決してアンダーサイズではないのですが、特に顔も手も足も小さいため、そのような子を大きく堂々としているように見せるといった技は、素人初心者には至難の業で、これにはとても時間がかかりそうです。
  
小さくてもクオリティーの高い美々杏

何とか形だけつけて、いざ臨んだ2003年3月30日の初めてのオーナーハンドラーでのショー参加は、アクシデント続き(準備不足)で、まず、当日の気温が予想よりはるかに低かったことが挙げられます。この日はかなり暖かくなるといった予報だったので、ノースリーブにレースのカーディガンだけで行ってしまいました。ところが早朝な上、会場は川辺であったため、あまりの寒さで予期せぬ腰痛が起こり、思うように体が動きません。幸い、パパと甥っ子が一緒であったため、テント(ターフと言うのかもしれません)張りや荷物の搬入はしてもらえましたが、屈めないのには参ってしまいました。アウトドアーの経験のない私には、調節の利く衣装といった概念が抜けていたようです。ハンドリングする際には調節の他に動きやすい衣装ということ、それと衣装の色も重要で、ワン子が映えるような色のものを着たほうが良いとのアドバイスを頂きました。

またテントですが、周りには女性だけのグループの方も結構多く、皆さん助け合ってテント張りをしていらっしゃいました。中にはテントなどは張らないで、簡易なテーブルと椅子だけ持ち込んだり、出番の少し前に見えて、受付を済ませてから車で待機している女性もいらっしゃいました。素人の場合、発電機を持ち込んだり、大きなテントを張るといったことはなかなか難しく、ドライヤーなどが必要な場合には、プロの方や知り合いに借りるといった方法もありますが、家では車の電源から取れるドライヤーを購入しました。結局使うことはありませんでしたが、なかなか便利なものだと思いました。

出番までの待ち時間は結構長く、この時間をどう使うかで大分コンディションが違うように感じました。このときの会場は「芝」で、ゆったりと練習できる場所もあったのですが、家の子たちは大の芝好きで、すっかり遊びに来ているつもりになっていて、練習そっちのけで芝を掘ってみたり、草を食べたり、終いにはゴロンと寝転がってみたりと、好き放題です。1,2頭だけでしたら見張っていられるのですが、4頭ともなると、1頭に目をやっているともう1頭が草を食べていたりと、てんてこ舞いでした。今考えますと、1頭1頭きちんと練習に出せばよかったと、管理の不十分さを反省しております。

単独が組まれる大きなショー以外では、クラスはジュニア、ヤングアダルト、アダルト、チャンピオンに分かれて審査が行われますが、無謀にも初めてのショーで4クラス全部に出陳したものですから、立て続けにワン子を出さなくてはならず、腕に巻いたゼッケンを取り替えるのも一苦労で、これは大分ハンドラーのohishiさんに助けていただきました。

なんとか触診台にワン子を乗せると、取ったはずの「草」が知らないうちにまたお尻に着いていて、これには本当に焦ってびっくりしてしまいました。いくらなんでもこれではまずかろうと思い、ジャッジの方に見られないよう草を取ることと、手順を間違えないようにするのが精一杯で、練習の成果は出せず、気がつくと順位もよく理解しないままに終わってしまいました。感想と致しましては、何とも珍出陳といった感じのコメディーチックな初デビューでした。

しかし、このショーの経験で、本番のアジアインには落ち着いて臨め、不思議と緊張することなく楽しめました。家のワン子も屋外よりは屋内の方がリラックスできるようで、特にウィンズは発電機の音が嫌いで、3月30日のショーでは発電機の音と大きなワン子に吼えられてしまったため少し萎縮してしまいましたが、この日は萎縮することもなく、元気一杯でした。ジュニアの女の子は12頭もエントリーしていて、入賞出来ませんでしたが、初めての屋内で初心者ハンドラーに引かれ、私がトライアングルでミスをしたのにもかかわらず、よくぞ歩いてくれたと思っております。

アジアインでのオーナーハンドラーの様子(写真はhikkoさんに頂きました)

ムーは初心者ハンドラーということもさりながら、少し前まで時期はずれの換毛をしていたため、チャンピオンクラスとしては少しコートが貧弱でしたが、来年はフルコートで再チャレンジの予定です。(でもフルコートになるかどうか保証はありません・・。)

先頭がムーです。(この写真はkimieさんに頂きました。)
右端に写っているバニラちゃんがオーナーハンドラーでAOMに輝きました。


私は負け惜しみ的(笑い)によく言うのですが、本当に欠点のない誰が見ても素晴らしいワン子なら誰が引いても勝てるのではないかと。でも、そんなワン子は本当に僅かで、大体のワン子には何らかの欠点があり、そこをどのようにカバーし、長所を最大限に見せるのかがハンドラーとしての力量なのではないかと・・・。卓越したプロの方は明らかにその点において、素人とは差があるように感じられますが、オーナーハンドラーでもプロに見劣りしないハンドリングをなさる方が増えているように感じます。

素人のオーナーハンドラーはプロではないのだから、勝ち負けにこだわらず、楽しめればそれでいいのではないかという考え方も成り立つと思います。でもやはりそれだけでは本当に楽しいとは言えないと思います。もちろんハンドラーを仕事にして日々研鑚しているプロの方に対して、にわかハンドラーが愛犬を引いて出て行ってもなかなか賞には結びつきません。でも、だからこそ、努力を重ねて賞に結びついた時の喜びはまたひとしおなのではないでしょうか。(とは申しましても、初心者の私目はまだ経験しておりませんので推測です・・・。)

少し前まではオーナーハンドラーではなかなか勝てないと言われていたようですが、最近ではその傾向も変わりつつあるように思われます。実際に2003年のアジアインではオーナーハンドラーで入賞した方達がたくさんいらっしゃいました。オーナーハンドラーの強みは何と言ってもワン子との信頼関係と安心感にあります。

オーナーハンドラーでもワン子が笑って走れるようになるまでには、それなりに時間がかかり、入賞できるようになるまでにはかなりの努力と忍耐が必要かもしれませんが、それでも少しでも多くの方にパピヨンのパートナーとしての魅力、その美しさ、賢さを知っていただけたらと、私にできることを、家の子達とのかかわりを通じて、これからも地道にゆっくりとやっていければと思っております。